2006年03月01日朝日新聞

 まちづくり地域課題研究サロン
 トークバトル【地域の自立とはなにか!】


<サロン> 地域おこしへトークバトル

■四国を代表する仕掛け人たち熱く

 四国を代表する地域おこしの仕掛け人たちが徹底的に議論を交わす「まちづくり地域課題研究サロン〜トークバトル 地域の自立とはなにか!」が24日、松山市道後姫塚のメルパルク松山であった。地域の活性化に取り組む市民や行政関係者ら約300人が詰めかけ、真剣な表情で聴き入った。

 講師は、夕日のまちづくりで55万人が訪れる観光地に旧双海町を育てた若松進一・旧町教育長(61)、IT化で注目される「内子フレッシュパークからり」元企画情報部長の森本純一さん(52)、料理に添えて季節感を演出する葉っぱを売る新ビジネスを立ち上げた徳島県上勝町の第三セクター「いろどり」の横石知二副社長(47)、ゆず加工品の売り上げ30億円を誇る高知県馬路村農協の東谷望史専務(53)の4人。

 午前中は4人がそれぞれ講演し、これまでの活動を振り返った。午後からは「地域が輝くには、まず個々が輝き、その上で一体化を目指すべきだ」 「住民一人ひとりが問題意識を持ち、感性を磨くことが大切」 などと熱く意見を戦わせた。

議論を戦わせる森本さん(左端)ら4人の講師たち=松山市内で

<トークバトル> まち再生 熱い思い

 地方が元気になるための方法を探る「まちづくり地域課題研究サロン〜トークバトル地域の自立とは何か!」が2月24日、松山市道後姫塚のメルパルク松山で開かれた。講師は、過疎化や高齢化が進む市や町にある「夕日」 「葉っぱ」 「ゆず」 などの地域資源を生かし、再生への道筋をつけたまちづくりの4人の仕掛け人たち。機知にあふれた議論が展開された。

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●第1部 ミニトーク
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 4人が30分ずつ講演する第1部「ミニトーク」からサロンは開会した。

★高知県馬路村農協専務・東谷望史さん(53)

 ・「龍馬のひと言」が出発点

 農協に入った当時は、林業の最盛期。私の出番はなかった。ある晩、夢に大好きな坂本龍馬が出てきた。「坂本先生の時代に生まれたかった」 と嘆くと、「おんしゃは何を言いよるか。おんしゃの時代にも、おんしゃのすることがあるがぜよ」としかられた。この夢が私の出発点。「ゆっくり流れる村の風を感じて」。これからも馬路のイメージを発信していく。

★徳島県上勝町・三セク「いろどり」副社長・横石知二さん(47)

 ・「自分には出番ある」が大事

 自分にはすることがある、出番がある、社会の中での存在感がある、これが大事。上勝の町民も、昔は役所や農協に何をしてもらえるかと期待ばかりしていたが、情報を得られる仕組みを作ったことで、次は何をすべきか考えるようになった。まちづくりとは、個が磨かれ、地域への一体感へと発展していくことだ。この一体感が上勝の強さだ。

★「内子フレッシュパークからり」元企画情報部長・森本純一さん(52)

 ・パートナーの存在が重要

 IT企業であったり、デザイナーであったりするが、地域づくりにはパートナーが重要。 外から協力してくれる人の存在が大きい。内子は町並み保存の先輩たちも力になってくれた。直販では安いだけで売れない。むしろ高くても良い品が売れる。それが自信を農家に与えてくれた。売れないという情報は残酷だが、それでも、考えるヒントをたくさんくれた。

★旧双海町教育長・若松進一さん(61)

 ・みんなが賛成するものはダメ

夕日を地域資源にまちづくりを始めると「夕日は沈む。町を沈めるんか」と怒られた。
100人が100人賛成するものは成功しない。決してよそのまねをせず、双海に来ないと食べられないもの、見られないものをつくろうと思った。それがシーサイド公園。楽しいことをしよう、新しいことをしよう、美しくしよう、これが私のキーワードだった。

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●第2部 トークバトル
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 第2部のトークバトルでは4人がパネリストを務め、意見を交わした。

◆人を動かす仕組み

 ・お年寄りに仕事を−−横石さん

 ★横石 お年寄りはデイサービスに行くより、仕事をしたいのが本音。朝起きた時に、しなければならないことがあると、おばあちゃんは腰をしゃんと伸ばす。地域社会や家の中で、出番をつくってあげる仕組みが一番必要なことだ。

 ★若松 全額負担、報告書不要で若者を海外へ派遣する仕組みを作り、20年間続けた。素朴な感動や気づきが人を育てるが、今では、ひとづくりに金をかける行政はなくなった。橋1本、道路1本の借金コンクリートをやめて、若者にお金を使うべきだ。

◆常識は非常識

 ・「うそ」にも情報戦略−−若松さん

 ★森本 ある町長と上勝町に視察に行ったら「2億や3億の金をかけても私の町は変わらんが、横石という男を2千万円で連れてきたら町が変わる。何とかならんか」と言っていた。講師をスカウトする非常識な発想が大事だ。

 ★若松 20年前、夕日を売るのは非常識と言われたが今は常識になった。横石さんの葉っぱ販売も非常識。東谷さんは見かけの悪いユズを搾り、自然農法と言って売っている。みんな「うそつき」だが、こんなうそのつき方こそが情報戦略だ。

◆感性を磨け

 ・自分の感性を信じて−−森本さん 

 ★若松 夕焼けコンサートを続けてきたが、続けることで音楽を学び、今では住民が音楽祭の審査員をできるまでになった。教育は、まちづくりの主人公をつくり、裏方も育てる。

 ★森本 自分たちのグループと感性を信じて続けることが大事。磨かれた感性でまちづくりをしたのではなく、こつこつと続けていく中で、感性が磨かれ、まちづくりが進んでいったように思う。

 ★横石 上勝町の80歳のおばあちゃんは、60代より今の方が感性がいい。IT化で大量の情報に接し、テレビ出演などで出会いも増え、自分の周りで情報の渦が巻き出して感性が磨かれた。

 ★東谷 日ごろから問題意識を持って過ごすことだ。ただ価値観は変化し続けるから、同じ感性では10年持たないことに注意を払う必要がある。

◆場をつくろう

 ・日ごろから問題意識−−東谷さん

 ★横石 ミカンを売ろうとするから売れない。この会場でミカンを配れば、皮というゴミが出、手が汚れて資料も触れない。でも、ミカンの皮を捨てられる袋と、お手ふきが付いていれば会議用ミカンに変身する。県内の会議全部で、お茶の代わりにミカンが使われればものすごい商売になる。売れる場を創造することが大切だ。

 ★東谷 横石さんと初めて会ったのは東京のデパート。葉っぱを売っていたが、デパートの客である主婦らが買うわけがない。売れる場の創造を提案するほど商売上手な横石さんだが、試行錯誤の努力の結果、上手になっただけだ。みなさんも頑張ってください。

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●第3部 ひざづめ談義
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 第3部はひざづめ談議。お酒も出され、ほろ酔いになった4人が、会場からの質問に答えて議論を深めた。

◆クレーム処理

 ★会場 ミカンを直販しているが、酸っぱい、腐っていたと苦情も来る。クレームにはどう対処しているのか。

 ★東谷 自分が客の立場で考えればいい。これ以外の判断はない。まずお客様の話を聞き、一緒に解決策を考えればいい。

 ★横石 モモの花が開いたら、中から虫が出てきたなど苦情は絶えない。逃げてはだめ。 「農薬も使っていませんので…」 と、ありのまま説明する。そして、来いと言われたら、すぐ行くこと。

 ★森本 消費者はミカンが腐って怒ったのではなく、腐ったミカンを入れた人間に怒っている。ミカンやシステムのせいにしてはいけない。

旧双海町教育長・若松進一さん
「内子フレッシュパークからり」
元企画情報部長・森本純一さん