2006年02月21日朝日新聞

 まちづくり地域課題研究サロン
 トークバトル【地域の自立とはなにか!】


<2> イメージ形成

●売りは「堂々たる田舎」
  日本の原風景や美しい環境でPR

 真っ赤な大きな屋根の木造校舎に向かって、女優の堀北真希さんが校庭を駆けていくグラビアが週刊漫画雑誌の巻頭を飾ったのは04年9月。昨年のテレビドラマ「野ブタ。 をプロデュース」に出演し、いま最も注目される役者の一人だ。
 ロックグループ「ジャパハリネット」が、ぬくもりを感じさせる木床の教室で演奏するプロモーションビデオは、その2カ月後に撮影された。
 この校舎は伊予市双海町上灘にある市立翠小学校。1932年に落成し、現役の小学校校舎としては県内で最も古い。撮影を許可したのは当時、双海町教育長だった若松進一さん(61)。
 「児童の迷惑ならんかったらヌードでなければええ。双海のイメージを全国にPRできれば最高の活用策」
 夕日で双海町を全国ブランドにした若松さんだが、景観や環境に取り組みだしたのは町企画調整室職員だった20年前。この校舎との出合いがきっかけだった。 初めて校舎を見たとき、これこそ保存すべき日本の原風景と思った。
 「雨漏りする校舎じゃ子どもがかわいそうじゃ」。建て替えを求める保護者の声に「木のぬくもりがある校舎で学べる方が幸せ。父、子、孫が同じ校舎で学ぶことも代え難い」と理解を求めてきた。
 校舎を中心にした地域全体の景観形成を考え、同じ上灘地区の住民によるホタルの里づくりも支援した。 石組み水路や水車を設け、地域景観として整備。 周囲の観光イチゴ園は、夕日の魅力で年間55万人を集める市内のふたみシーサイド公園でPRし、年間1万人を超える双海の観光資源に育て上げた。
 「だれも注目しなかった地域資源に注目したという点では、夕日も翠小も同じです」と若松さん。
    ◇
 内子町のハーブ農家森本純一さん(52)が、高知県の馬路村農協の東谷望史専務(53)を初めて訪ねたのは95年3月。ゆず加工品という商品でなく、馬路村そのものを売ろうとする姿勢に大きな驚きを受けた。
 馬路村農協のPRのコンセプトは「堂々たる田舎」。ポスターには村の子どもやお年寄りが大きく登場するが、商品や農協名などは小さく隅っこにあるだけだ。
 「美しい環境が馬路の売りじゃちよ」と東谷さん。 ゆずを搾って得られる果汁は重量比で15%。種や皮を入浴剤などに加工しても50%が産業廃棄物になるが、もう一つの主産業である林業で出るオガクズと混ぜて堆肥(たいひ)にし、ゆず農家に無料で配っている。
 「最後の目標は馬路へゆずを搾りに来てもらう観光地化。人が来たら、温泉に入り、ゆず製品も土産で売れ、ますます馬路が元気になる」 と東谷さん。
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 葉っぱを販売する第三セクター「いろどり」 が注目を集める徳島県上勝町でも日本庭園のような景観形成が進む。山に葉を集めに行くより、美しく紅葉して人気の高い木々を自宅の周りに植えた方が手間がかからないからだ。 横石知二副社長(47)は「私たちが売っているのは落ち葉ではない。美しい葉っぱが採れる上勝」 と強調する。

 地域を売り出すには、発信力のあるイメージ形成が欠かせないようだ。

翠小学校に向かって走る堀北真希さんを撮ったグラビア写真。
別のページには下灘駅で撮影された写真も掲載された(いずれも週刊ビッグコミックスピリッツ04年9月20日号、撮影は西田幸樹さん)