2006年02月21日朝日新聞

 まちづくり地域課題研究サロン
 トークバトル【地域の自立とはなにか!】


<4> 消費者ニーズ

●耳を傾け柔軟に対応●

●高齢化に合わせ販売システム構築●

 伊予市双海町高岸のふたみシーサイド公園で、じゃこ天の店を営むのは上灘漁協女性部の面々だ。95年3月の開店以来、売り上げは右肩上がり。今年度の目標は5500万円を掲げる。
 「若者が喜んで食べる1枚100円のじゃこ天を作ってくれんか」
 開店当時、地域振興課長として公園建設を担当していた若松進一さん(61)が、高齢になっても働ける場所が欲しいと願っていた女性部に声をかけた。
 店舗責任者の富岡喜久子さん(75)は「スーパーに行けば3枚150円で買えました。小魚をすり身にして揚げる家庭料理。売れるとは思えなかった」と振り返る。
 宇和島市で蒲鉾(かまぼこ)店を営む若松さんの友人の指導で、味には自信が持てたが若者向けの工夫が必要だった。
 思い悩む富岡さんたちに若松さんが提案した。「ファストフードのように歩きながら食べてもらったら。手を汚さず食べられるようできんか」
 紙で巻いてみたが油が染みて手が汚れた。そこで、じゃこ天を串に刺したところ、片手にじゃこ天、片手に缶ビールを持って海岸線を歩く若者の姿が夏の風物詩になった。
    ◇
 馬路村農協の販売は電話やホームページで注文を受ける直販と、問屋など流通ルートが半々だ。「直販は消費者の声を直に聞け、こちらの思いも直接伝えられるのが大きい」と東谷望史専務(53)。
 顧客からのクレームこそ、業務改善のヒントが詰まっていると小さなクレームにも耳を傾け、すべて記録に残す。
 ギフトとして注文を受けたのに、商品に誤って請求書を同封した失敗は「私の会社の取引先が全部ばれてしまった」と厳しいクレームになって返ってきた。以来、請求書は商品と別送にした。「たった80円の送料をケチってお得意様を失ったが、クレームが来て改善したことで、同じ失敗は防げる」 と東谷さん。
     ◇
 内子町の農家と松山市の経済人が3月に設立する企業組合「内楽農(うちらーの)」に森本純一さん(52)も参加する。
 森本さんが手がけた「内子フレッシュパークからり」は、農家が自ら農産物を持参して値を付け、売れ残りを持ち帰る仕組みが彼らの経営センスを磨いた。ところが、高齢化が進んで、農産物を運べない農家が出てきた。消費地となる都市部には、車で買い物に行けない高齢者がいる。
 「内楽農」の目指すものは高齢者を中心に据えた農業の展開だ。週2回、内子町内の農家の庭先で集荷。松山市木屋町1丁目の店舗に運んで販売する。駐車場もなく、歩いて通う高齢者が対象だ。週2回買ってもらえれば、お年寄り夫婦の食卓はまかなえる。
 からりと内楽農が目指すものは、農家の自立で変わらない。しかし、出荷する側と購入する側の想定が全く違うから、補い合う。
 「消費者のニーズは多様。ならば販売するシステムも多様であった方がいい」。だから、森本さんは両方に出荷する。

年間55万人が訪れるふたみシーサイド公園。夕日のモニュメントや夕日の放送局の設置など、利用者のニーズに応える努力が続く=本社ヘリから
じゃこ天をつくる上灘漁協女性部の部員たち。エソやグチなど地元の新鮮な小魚が味に深みを与える=伊予市のふたみシーサイド公園で